[ASIBA授業レポート] Day2-3「橋を渡る」 |ASIBA
INC-3RDプログラムレポート

[ASIBA授業レポート] Day2-3「橋を渡る」 |ASIBA

クリエイティブ領域に身を置く30歳以下を対象に、「問いと実践を往復するクリエイティブ・アントレプレナーシップ」の育成を目指すASIBA Creative Incubation Program 3期。4月26日〜28日、プログラムのDay2として2泊3日のキックオフ合宿が開催されました。

初日は、参加者同士の距離が一気に縮まる自己開示と対話の時間に。そして2日目は、各自が自らのプロジェクトに立ち返り、その方針を再設定。対話と試行を重ねる中で、実践への輪郭を描いていきました。最終日の3日目には、舞台を東京・竹中工務店の堀ビルへと移動。各プロジェクトの「次の一手」を見据えたレクチャーとメンタリングが行われました。外部メンターによる問いかけは、自身のテーマを再確認する機会となり、プロジェクトの進化を予感させる濃密な締めくくりとなりました。

言葉が伝わらないという痛みから始まる

2日目に実施された6時間におよぶ大討論会では、参加者それぞれが自らの構想を言語化し、仲間たちに向けてプレゼンテーションを行いました。 その中で多くの人が直面したのは、「自分の言葉が他者に伝わらない」という壁。たとえ身近な仲間であっても、共感や理解を得られないという感覚は、自身の思考や表現の届かなさを突きつけられるものでした。

堀ビルで始まった3日目の冒頭では、前日の振り返りを実施。限られた時間の中で、参加者は「自分の言葉」と「社会」との距離を見つめ直し、そのギャップをどう埋めるかについて再び思考を深めていきました。

「伝わらなかった」という事実は、単なる課題ではなく、プロジェクトの原点に立ち返る契機でもあります。言葉の精度、語りの順序、想像の余白。そうした要素を、社会の文脈とどう接続するか。 それぞれが模索しながら、プロジェクトを一歩先へ進める視点をアップデートしていきました。

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「問いは考えない、でもいいんじゃない?」 ー 山路さんレクチャー

午後最初のレクチャーには、建築家の山路湧さんが登壇。 語られたのは、「問い」や「意味」を“立てなければならないもの”と捉えすぎることで、行動が止まってしまう危うさについてでした。

「やってみたいから、やってしまう」

山路さんの実践は、この一言に集約されます。 湯島の倉庫に住んでみる。神保町でロフトを自作して住んでみる。手作りの判子をレーザーカッターでつくって配る。どれも「問い」ではなく、衝動を起点とした行動ばかりです。

そこには「秘密基地」をつくるような遊び心と、既存のルールのグレーゾーンをすり抜けるしたたかさが宿っています。

もちろん、「問い」や「意味」、「課題」は重要です。しかしそれに縛られることなく、“黙っていてもやっちゃう”という動機にこそ、継続や深化のヒントがある。 これから社会にプロトタイプを投げかけていく私たちにとって、もうひとつの「はじまり方」を示してくれるレクチャーでした。

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「引き返せる勇気、飛び込む自由」 ー 中條さんレクチャー

続くレクチャーには、HCI(Human-Computer Interaction)研究者の中條麟太郎さんが登壇。心理学と情報学の交差点でプロジェクトを展開する中條さんは、国際学会CHI2025の運営にもボランティアとして携わっています。

紹介された2つの事例は、それぞれ異なる角度から「自分の問い」と「社会との接続」を深掘りするものでした。

LearnWiz One 孤独なオンライン授業体験から生まれたプロジェクト。学生同士の対話を促す仕組みとして教育現場に導入されたものの、事業化の難しさに直面。最終的には大学に譲渡し、「使われ続ける」ことを目指す非営利の道を選択しました。

EmoBalloon 「吹き出しの形」から着想を得て、感情の伝わるテキストチャットを開発。当初は関心の外にあった“異文化コミュニケーション”の研究に飛び込む中で、研究費や評価が後からついてきたというストーリー。

「やりたいことを、やりたいように」

この言葉には、ASIBAの取り組みにも共鳴する視点が込められていました。 やりたいことは、問いや社会課題からではなく、“違和感”や“ちょっと気になる”といった感覚からでも始めていい。 走りながら考え、必要があれば立ち止まり、引き返す。その柔軟さこそが、プロジェクトをしなやかに育てていく鍵になるのです。

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メンタリングとアクション共有

午後後半は、各プロジェクトについてのメンタリングと進捗の共有の時間へ。レクチャーを経て、参加者の中には「問いの立て方」や「始め方」へのこだわりが少しずつほぐれ、新たな視点が芽生えている様子も見られました。

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おわりに

「問い」や「テーマ」は、時に重く、足を止める要因にもなります。けれど、最初は小さな衝動や違和感でもいい。自分自身が「なぜだか気になる」と思える方向へと、一歩を踏み出してみる。

このキックオフ合宿は、まさにそのような“最初の一歩”を踏み出すための場所でした。これから社会に向けてアクションを起こしていく参加者たちの歩みが、どのように展開していくのか——。その続きに、どうぞご期待ください。

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